バッティングの指導の中で「手首をこねるな」というフレーズを聞くことがあります。
打撃の時に手首をこねるクセがある選手は、特に小学生や中学生など、バッティング技術がしっかりと身についていない世代によく見られます。
こちらの記事では、バッティングの際に、「手首をこねている」「手首を返すのが早い」などと指導されたり、言われたことがある方に手首をこねる癖を改善する練習方法について解説します。
記事のもくじ
打つ時に手首をこねるとどんなデメリットがあるのか?
まず、手首をこねた打ち方をしてしまうと、体幹の動力をうまくボールに伝えることができず、ボールの芯を捉えることが難しくなってしまいます。
また、バットの軌道が外から内へと入ってくるため、ボールの外側を打つことにつながります。
そうなると、いわゆる引っ掛けた打球が多くなり、ボテボテのゴロや擦ったような内野フライによる凡打が増える原因になります。
逆に言えば、自分の打球傾向がボテボテのゴロや擦ったようなフライが多い場合は、手首をこねて打ってしまっていることが原因の可能性もあります。
さらに、手首をこねた打ち方になると、遠くに飛ばすことが難しいため、外野の頭を超えるような長打を打つのは難しくなるでしょう。
このように、手首をこねるバッティングのデメリットとして、バットの遠心力が失われるため、ボールに強い力が伝わらず、飛距離が出ないという点が挙げられます。
また、アウトコースのボールを強く打ち返すことも難しくなるため、一刻も早く正しいバッティングフォームを身につけたいところです。
手首をこねた打ち方の特徴・状態は?
では、具体的に「手首をこねた打ち方」とは、どのような場合を指すのでしょうか?
手首をこねるクセを治すには、まずはそれがどのような状態かを知っておく必要があります。
具体的に「手首をこねた打ち方」とは、ボールとバットがぶつかるインパクトの際に、引き手の手首がすでに返ってしまい、押し手の方が前に出てしまう打ち方です。
(※ 右打者の場合:左手=引き手・右手=押し手)
つまり、手首をこねた打ち方になる原因としては、1つめに手首を返すタイミング、2つめに左右の手首の使い方と位置関係にあります。
上の図を見てください。
左の図は、バッティングで理想とされるインサイドアウトのスイングの軌道です。
バットスイングは、インサイドアウトの軌道で振ることで、前方へのスイングの軌道が大きくなるため、強い遠心力を生み出し、強い打球を飛ばすことができます。
つまり、自分の体に近いボールの側面である内側を打つバットの軌道となります。
一方で、右の図のアウトサイドインのスイングは、手首をこねるバッターやドアスイングと言われるバッターによく見られる傾向です。
原因の1つめである、手首を返すタイミングが早い場合、スイングの開始からグリップが回り始める起点までが短く、全体的なスイング幅が狭くなっているのがわかります。(図右)
右バッターの場合、押し手となる右手が前に出てくるタイミングが早くなると、振り始めてから早い段階でバットのヘッドが外回りしながら出てきます。
そして、スイングの支点が体に近いままバットが返ってくるため、バットはアウトサイドインの軌道になり、ボールの外側を打つことになってしまいます。
このように押し手の出てくるタイミングが早すぎると、結果的に、こねたバッティングになってしまいます。
“インサイドアウト”は、体の近くから遠くを通っていく軌道に対し、“アウトサイドイン”は体の遠くから近くを通る逆の軌道であることをイメージして覚えておきましょう。
2つめの、左右の手首の位置関係は、上記のように押し手が出てくるタイミングが原因となることもありますが、逆に引き手を自分の体に引いてしまうことが原因になることもあります。
例えば、右バッターの引き手である左手をインパクトの際に、自分の体の方向に引いてしまうような打ち方になってしまう場合です。
せっかく押し手を良いタイミングで返すことができても、インパクトの前に引き手を引いてしまうと、スイングの支点であるグリップの軸が後ろにずれてしまい、こねたバッティングになってしまうのです。
以上の2つが、手首をこねてしまうバッティングで考えられる原因です。
これらのこねるバッティングの原因を修正するには、インパクトの前に押し手が引き手を追い越してしまわないように、手首を返すタイミングと左右の手首の位置関係を覚える必要があります。
指導によって手首をこねる癖を修正する方法
指導によって手首をこねるクセを治したい場合、選手への意識づけが大切になります。
言葉で伝えるだけではなく、選手に正しいイメージを持ってもらいながら反復練習を繰り返しましょう。
選手に意識してもらうイメージとしては、主に次の2つのポイントです。
- ボールの内側を見て、自分の体に近いボールの内側を打つ
- ミート後はそのまま逆方向に押し込む
まずは、ボールの内側を打つ意識を持つことで、グリップが体の近くを通り、ヘッドが返るタイミングを遅らせることができるため、インサイドアウトの軌道を作ることができます。
また、ミートした後は、そのまま逆方向へ押し込むように大きなフォロースイングをとることで、より強い力をボールに伝えることができます。
選手が見ているポイントと、実際にミートしているポイントを確認しながら、頭の中のイメージとスイングの動作が一致するようにアドバイスしましょう。
極太グリップのバットを使ってこねるクセを修正する方法
現在、様々な野球の練習道具が開発されていますが、大阪桐蔭などの強豪校でも多く取り入れられているのが、極太グリップのバットです。
極太グリップのバットは、実際に試合で使うようなバットと比べ、2回りほどグリップが太くなっています。
この極太グリップのバットを使うことで、自然と手首の動きが制限されるため、手首をこねるクセを治すことができます。
つまり、どうすれば手首をこねるクセを治せるのかがわからない方でも、極太バットを使うだけで修正することができる可能性があります。
また、極太バットを振るためには、強く握る必要があるため、同時に握力も鍛えることができます。
手首をこねるクセがない方でも、普段の練習から極太グリップのバットを使うことで、バッティングの上達が見込めるため非常にオススメの練習道具です。
手首をこねるクセを修正する練習メニュー
手首をこねるバッティングフォームを修正する練習方法の中でも、簡単にできるメニューを2つご紹介します。
逆手で打つ素振り・ティーバッティング
1つめは逆手でバットを握る素振りとティーバッティングです。
通常は、右バッターであれば、右手を上、左手を下に握って構えます。
その通常の握りとは逆にバットを握って素振りやティーバッティングをすることで、押し手を返すタイミングを遅らせることができます。
逆手でのスイングを繰り返すことで、手首をこねるクセを修正することができます。
逆方向へのティーバッティング
2つめは逆方向を意識したティーバッティングです。
通常のティーバッティングは、ネットに対して足を垂直に構えますが、少しオープンスタンスで構えるようにします。
そして、オープンスタンスのまま足を踏み出し、右バッターであればセカンド方向、つまり逆方向に打つイメージでティーバッティングを行います。
逆方向に打つことで、ボールの内側を打つ意識が生まれ、手首を返すタイミングを掴むことができるようになります。
最後に
以上、今回は手首をこねるクセを治す方法について解説しましたが、最後にメリットについてもお伝えします。
手首をこねるバッティングは、使い方次第ではメリットとなることもあります。
それは、ヒットエンドランの時などに、外角のボールを意図的に引っ掛けることで、内野の間を抜く打球を転がす場合です。
意図的にボールを引っ掛けるバッティングは、高度な技術が必要なため、誰にでもできることではありませんが、指導者は普段から選手の打球傾向を把握しておくと良いでしょう。
手首をこねるバッティングは、デメリットである一方、時にはそのデメリットを生かせるケースが訪れるかもしれません。
選手はもちろん、指導者は、それぞれの選手の特性を把握しておくようにしましょう。