小学校の野球には、軟式ボールを使う学童野球や硬式野球のボーイズリーグ、リトルリーグ、ソフトボールなどがあります。
それぞれ小学校のチームを卒団した後、野球を続けたい選手が悩むのが、中学野球のチーム選びです。
このページでは、「中学校の軟式野球部」「軟式クラブチーム」「硬式クラブチーム」の3つに分けて、中学野球チームを選ぶ時のポイントや特徴、メリット、デメリットを紹介しています。
中学野球のチーム選びに迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
中学の部活(軟式野球部)
中学軟式野球部の特徴
中学の野球部の特徴は、学校のクラブ活動であるため、基本的には授業終了後の放課後や休日に学校のグランドや施設を使って練習、試合をします。
令和元年度において、日本中学校体育連盟の加盟校は男子で8,318校(164,173人)、女子で488校(3,302人)となっています。
中学の野球部は基本的には、学校単位でチームを作ります。
また、学校の先生が指導するため、普段の学校生活を含めて、共に過ごす時間が長いのが特徴です。
大会は、市町村など地域の大会で勝ち進めば、地方の大会や全国大会へ出場することができます。
中学軟式野球部の全国大会は、高校野球の甲子園球場のように、決まった球場で行われるのではなく、毎年、各都道府県の持ち回りで開催されています。
中学軟式野球部のメリット
中学軟式野球部には、下記のメリットがあります。
- 平日も練習できる
- 勉強と両立できる
- 金銭面の負担が少ない
- 遠征が少ない
- 保護者の負担が少ない
平日でも練習できる
中学の軟式野球部では、学校の授業終了後に学校内で練習できるため、平日でも野球の練習ができます。
野球上達のためには、継続的な練習も大切になるため、平日の練習に取り組み、技術レベルを上げたいところです。
学校が終わって、家に帰ることなく、すぐに野球に切り替えができるのは大きなメリットと言えます。
勉強と両立できる
勉強と野球を両立できることもメリットとして挙げられます。
中学校の軟式野球部では、テスト前やテスト期間中は、勉強を優先し、クラブ活動は休みになることが多いです。
そのため、勉強と両立して野球を続けることができます。
金銭面の負担が少ない
中学校の軟式野球部の場合、野球にかかるお金の負担が少ないというメリットが挙げられます。
外部の硬式、軟式のクラブチームでは、月会費や遠征費など部活動以上にお金がかかります。
野球道具に関しては、ユニフォームやグローブは購入が必要ですが、チーム道具の多くは学校にあるものを使用しますので、費用面での負担は少ないと言えます。
遠征が少ない
遠征が少なく移動時間が短いことも一つのメリットとして挙げられます。
中学の軟式野球部は、試合などで遠征することは、それほど多くありません。
練習試合などでも近隣の地域で行われることが多く、自転車や電車が主な移動手段となります。
また、宿泊を伴う合宿練習などもほとんどありません。
保護者の負担が少ない
中学の軟式野球部は、保護者の負担が少ないというメリットがあります。
金銭面の負担や遠征が少ないということは、保護者の負担が少ないとも言えます。
また、外部のクラブチームは、保護者会を設置し、お茶当番や遠征時の車出しが必要となるチームもありますが、中学の野球部では、そのような保護者の負担はありません。
中学軟式野球部のデメリット
中学の軟式野球部には、メリットがある一方で、下記のようなデメリットも考えられます。
特に、高校野球への進路に関わる場合もあり、大切なポイントとなりますので、しっかりと確認しておきましょう。
- 指導不足の可能性
- 他クラブとグランドの併用
- 他チームとの交流が限定的
- 人数不足の懸念
- 強豪校からの推薦
指導力不足の可能性
中学の軟式野球部は、学校の部活動であるためチームを自由に選ぶことができません。
基本的に学校の先生がクラブ顧問を務めるため、顧問によって指導力や熱意に差が出てしまうことがあります。
また、人事異動で顧問が変わる可能性もあるため、自分が望む環境で野球をできなくなる可能性があることを考慮しておきましょう。
他クラブとグランドの併用
中学の野球部は、学校のグランドを利用することがほとんどですが、サッカーや陸上など、グランドを利用するのは野球部だけに限りません。
グランドは他クラブとの併用になるため、グランド全面を使えなかったり、使える時間が制限されてしまう可能性があります。
他チームとの交流が限定的
中学の軟式野球部は、同じ市町村など、近隣のチームと練習試合などを行うことがほとんどです。
そのため、交流が限定的であり、様々な野球レベルのチームとの交流はそれほど望めません。
数多くのチームと練習試合をして、野球レベルを上げたいと考える場合に、交流が限定的であることはデメリットとなることがあります。
人数不足の懸念
中学の軟式野球部は、基本的に学校単位でチームを組むため人数不足の懸念もあります。
近年は、スポーツの幅が広がっている上、少子化の影響もあり野球人口は減少しています。
野球部のメンバーが多く在籍している場合は問題ありませんが、中には学校単位では選手が集まらないため人数不足に陥り、試合が組めなかったり、練習のみになっている場合もありますので、どれだけの人数が集まっているかも考慮しておきましょう。
強豪校からの推薦
中学よりさらに先の進路になりますが、甲子園に出場するような強豪校に入りたいと考えている場合、中学の軟式野球部で推薦をもらえる可能性はクラブチームに比べると低い傾向にあります。
なぜなら、強豪校のスカウトは、クラブチームと継続的に関係を築いており、様々な情報網を持っています。
特に、強豪チームの選手や全国大会は定期的にチェックして、有望な選手には声がかかります。
中学の野球部に所属しながら、強豪校から推薦をもらうためには、チームの成績や個人の能力を高めて実績を上げる必要があります。
以上のように、必ずしも全ての中学の軟式野球部に当てはまる訳ではありませんが、上記のようなメリット、デメリットが考えられます。
中学クラブチーム(軟式)
中学軟式クラブチームの特徴
中学の軟式クラブチームは、中学の野球部と違い、校外で活動しているチームです。
ボールは、中学の軟式野球部と同じく軟式ボール(M球)を使用します。
それぞれ、所属する連盟や地域で大会が行われており、全国大会など大きな舞台につながる大会も開かれています。
中学の野球部とは違い、中学校の枠を超えて近隣地域から選手が集まってチームを形成しています。
グランドは、近隣の学校やグランドなどを使用して、試合、練習を行なっています。
中学軟式クラブチームのメリット
中学軟式クラブチームには、下記のメリットがあります。
- ケガや故障の負担が少ない
- チームを選べる
- 金銭面の負担は軽め
- 遠征がある
- 野球推薦での進学
ケガや故障の負担が少ない
中学軟式クラブチームは、硬式野球チームに比べると、ケガや故障の負担が少ないというメリットがあります。
軟式ボールを使用するため、デッドボールや自打球でボールが体に当たっても、ケガのリスクを抑えることができます。
また、特に投手の場合は、硬式ボールを投げるよりも負担が少なく、成長過程にあっても肩、肘の故障リスクを抑え、体作りと同時に技術レベルを上げることができます。
チームを選べる
中学軟式クラブチームは、中学の軟式野球部とは違い、自分で自由にチームを選べます。
チームの指導方針や指導者、野球レベル、グランド、バッティングマシンなどの設備、野球道具などは、チームによって違いがあります。
体験練習などに参加してチームを選べるのは、中学の軟式野球部とは違ったメリットです。
金銭面の負担は軽め
中学軟式クラブチームは、中学の軟式野球部よりは費用がかかる傾向にありますが、硬式野球のチームに比べると費用の負担は少ない傾向にあります。
硬式野球は金銭的な負担が大きく難しい、また、通学している中学の軟式野球部では物足りないという方にとってはメリットとなります。
遠征がある
中学軟式クラブチームは、中学の軟式野球部よりも活動範囲が広がり、車などでの遠征での試合も増えます。
また、合宿など宿泊を伴う行事が行われることもあるため、近隣の地域以外でも様々なレベルや環境での野球を経験することができます。
野球推薦での進学
中学の野球部と比べると、野球経験がある指導者が多いため、高校とのつながりから野球推薦での進学も期待できます。
毎年のように、特定の高校に選手を排出しているチームは、高校のつながりがあると考えてよいでしょう。
進学の実績はホームページで公開されていることもありますし、掲載されていない場合は、体験練習に参加して、チーム関係者に聞くと教えてくれます。
中学軟式クラブチームのデメリット
中学軟式クラブチームにも、デメリットがないわけではありません。
中学の軟式野球部や硬式クラブチームとの違いを確認してから、チーム選びをしましょう。
- 保護者の負担がある
- 硬式ボールへの対応
- 平日練習がない
- 甲子園常連校からの推薦
保護者の負担がある
中学軟式クラブチームの場合、試合や合宿などの遠征が増えます。
遠征の際は、学童野球と同じように、選手の保護者が車出しを行い、選手が乗り合わせて移動するチームも多くあります。
そのため、選手の保護者が車の運転手を務めないといけない可能性があります。
また、お茶当番で選手のサポートを母親が中心となって行なっているチームもあります。
仕事や家庭の都合に合わせて柔軟に対応してもらえるかなど、保護者の負担の状況については、必ず事前に確認しましょう。
硬式ボールへの対応
現在の中学軟式クラブチームでは、中学の軟式野球部や草野球などと同様でM球のボールを使用します。
高校野球では、プロ野球などと同様で硬式ボールを使用しますが、硬式ボールは軟式ボールと比べて、体に当たると痛いため、高校野球で硬式野球部への入部を考えている場合は、慣れるまでに時間がかかる可能性があります。
高校野球は2年5ヶ月程度しか期間がないため、少しでも早く高校野球に対応したいと考えている場合はデメリットになります。
平日練習がない
中学軟式クラブチームで、平日練習を行なっているチームは少ない傾向にあります。
そのため、平日に練習をしたい場合は、自分で練習場所や時間を確保して取り組む必要があります。
ただし、通う学校によっては、軟式野球部との掛け持ちを許可されている学校もあるため、顧問の先生に入部可能か確認すると良いでしょう。
甲子園常連校からの推薦
高校への進学に関しては、中学軟式クラブチームでも推薦をもらえる可能性はありますが、甲子園常連校の中学出身チームを見ると、硬式クラブチームの選手の割合が多い傾向があります。
例えば、春夏連覇を二度達成している大阪桐蔭には、全国でもトップクラスの選手が集まっており、ほとんどが硬式クラブチームの出身者となっています。
もちろん、全ての高校で、軟式の出身者が少ない訳ではありませんが、全体の割合から見てもやはり硬式出身者の割合が増えているようです。
ただし、軟式、硬式を問わず、甲子園常連校から推薦をもらえるよう、他の選手を圧倒する活躍は必要です。
以上のように、中学軟式クラブチームには、上記のようなメリット、デメリットが考えられます。
ご自身が通う中学の軟式野球部では少し物足りないと感じる方は、選択肢として検討してみてください。
中学クラブチーム(硬式)
中学硬式クラブチームの特徴
中学の硬式クラブチームは、校外で活動しているチームです。
ボールは、プロ野球や高校の硬式野球部と同じく硬式ボールを使用します。
主な団体は、ボーイズリーグ、リトルシニア、ヤングリーグ、ポニーリーグなどに別れており、基本的には所属する団体で大会を開催しています。
また、ジャイアンツカップなど、団体の垣根を超えた大会も用意されており、東京ドームや甲子園球場などプロ野球で使用する球場で試合を行うこともあります。
チーム単位で見ると、最近は、法人として運営しているチームも増えてきており、チームの運営方針は様々です。
普段の練習は、グランドや球場などを使用しますが、安全面を考えると軟式野球とは違い、できる場所が限られています。
中学硬式クラブチームのメリット
中学硬式クラブチームには、下記のメリットがあります。
- 硬式ボールへの慣れ
- チームを選べる
- 設備が整っている
- 高いレベルを経験できる
- 強豪校への進学
硬式ボールへの慣れ
中学硬式クラブチームでは、プロ野球や高校の甲子園大会などと同じく、硬式ボールを使用します。
中学1年生から硬式ボールを使うことで、程よいスピードから慣れることができるため、高校へ入ってから改めて慣れないといけないということはありません。
高校野球は2年5ヶ月程度と短いため、中学時から硬式ボールに慣れているというのはメリットになります。
チームを選べる
クラブチームであるため、住んでいる地域や通っている学校に縛られることなく、自分に合ったチームを選べます。
指導者は様々な経歴を持っており、元プロ野球選手の他、社会人野球や甲子園出場経験がある指導者もいます。
指導者の経歴やチームの実績などを照らし合わせてチームを選べるのは大きなメリットです。
設備が整っている
中学硬式クラブチームは、広い専用グランドの他、複数のバッティングマシンやネット、チームバスなど、野球上達のための設備が揃っているチームが多くあります。
中には、雨の時などでも練習できる室内練習所があるチームもあるほどです。
野球のレベルアップのためには、充実した設備も大きなメリットとなります。
高いレベルを経験できる
中学硬式クラブチームには、高いレベルで野球を習いたいと考えている選手が、たくさん入団する傾向があります。
特に人気のあるチームは、1学年で30人以上の選手を抱えるチームもあり、レギュラーを掴むために競い合いが生まれます。
それらが相乗効果となってチーム全体がレベルアップされていきます。
高いレベルの野球を経験できることは、自分自身の上達や成長につながります。
強豪校への進学
中学硬式クラブチームからは、多くの選手が強豪校へ進学しています。
各地で開催される大会やチームの練習などにも、高校のスカウトは足を運び選手をチェックしています。
大会は、全国大会はもちろんのこと、日本代表チームや地域の選抜チームを結成した大会も開かれるなど、有望な選手は早い段階で強豪校から勧誘されることもあります。
また、自分の志望校があれば、チームに相談することで、コンタクトを取ってもらえたり、志望校がなくても自分に合った高校を紹介してもらうことができます。
高校への進学の実績を知ることも、チーム選びのポイントになります。
中学硬式クラブチームのデメリット
中学硬式クラブチームには、高いレベルを求める選手には魅力的ですが、デメリットもあります。
入団を決める前に、メリットとデメリットを知っておきましょう。
- 金銭面の負担が大きい
- 保護者の協力が必要
- 平日練習がない
- 試合に出れない可能性
金銭面の負担が大きい
中学硬式クラブチームは、軟式野球と比べて金銭面の負担が大きくなります。
小学生の時に使っていたグローブやスパイクと比べても、高価なものが多い上、怪我防止のためのレガースなど野球道具の数も増えます。
また、毎月の会費や遠征費などを含めると、20,000円以上は必要になると考えておくことをおすすめします。
そのため、事前に必要なお金は必ず確認しておきましょう。
中学硬式でかかるお金の詳細はこちらにまとめています。
保護者の協力が必要
中学硬式クラブチームには、保護者の協力を求めるチームが多くあります。
選手が移動するための車出しの他、グランド設営やお茶当番、大会での審判、ウグイス嬢、スコアラーなど、チームによって求められる役割は様々です。
保護者の協力を必要としないチームもありますが、全体を見渡しても、その数はまだまだ少ないのが現状です。
また、練習場が遠方の場合は、車での送迎が必要になる場合もあるため、仕事など家庭の都合に合わせたチーム選びをしましょう。
平日練習がない
中学硬式クラブチームは、学校外での活動であるため、平日練習を行なっているチームは少ない傾向にあります。
しかし、多くはありませんが、中には平日練習を行なっているチームもあるため、平日もチームでの練習を希望している場合は、平日練習があるチームを選びましょう。
試合に出れない可能性
中学硬式クラブチームでも、特に強豪チームの場合は、能力の高い選手が多く集まる傾向にあります。
また、特に中学生の間は、成長過程であるため、体の大きさにも差が付きやすい時期になります。
成長期が早く訪れた選手は、下級生でも上級生に混じって試合に出ることもありますが、人数が多くなればなるほど、試合に出るチャンスは少なくなることも考慮しましょう。
以上のように、中学硬式クラブチームについて、メリットとデメリットを挙げました。
硬式野球と聞くと敷居が高く感じる方もおられますが、チームによって、環境や野球レベル、選手の人数は様々です。
まとめ
このページでは、中学の野球の進路を選ぶ時に、中学の軟式野球部、軟式クラブチーム、硬式クラブチーム、それぞれの特徴とメリット、デメリットについて紹介しました。
住んでいる地域や検討しているチームによっても変わりますが、おおよそ次のようにまとめることができます。
- 中学の軟式野球部 = 毎日、気軽に身近なメンバーと野球を楽しみたい
- 軟式クラブチーム = 環境や指導者を選んで野球がしたい
- 硬式クラブチーム = 中学生の間に硬式ボールに慣れ、強豪校への進学を目指したい