野球選手が負うケガには、肩や肘、腰、股関節、膝など様々な部位のケガがありますが、その中でも最も多いケガとして、“野球肘”が挙げられます。
野球肘は、ボールを投げる時の肘の運動によって起こるケガで、筋肉や筋が引っ張られたり、骨や軟骨が擦れることによって痛みが生じます。
特に、小学生や中学生など、体がまだ完成していない選手で多く見られるため、注意が必要です。
万が一、野球肘をそのままにして、治療をせずにボールを投げ続けると、さらにケガは悪化し、選手生命を縮めることにもつながります。
野球肘の症状としては、肘の内側、もしくは外側に痛みを感じる、肘がまっすぐに伸びないなどの症状があります。
今回は、特に少年野球のこども達に多く見られる“野球肘”を防止するための方法を紹介します。
正しい投げ方を知る
ボールを投げる際、肘や肩に負担がかかるような投げ方をしてしまうと、いくら準備運動や筋力を鍛えても、野球肘になる可能性は高まります。
野球肘を防止するためには、肘や肩に負担が少ない正しい投球動作を覚えることが、とても大切です。
まずは、ボールをトップに持ってきた時、肘が頭の方向に倒れるようにしましょう。
この時に肘が伸びた状態になってしまうと、肘や肩に大きな負担がかかってしまいます。
次にトップからリリースまで持っていく時に、手のひらがずっと前を向いた状態だと、肘の内側に負担がかかります。
ボールを投げる時は、小指から先に出し、肘を外旋させながらリリースポイントまで持っていくのが自然なリリースとなります。
そのため、ボールをリリースした後は、親指が下に向く形になります。
ただし、投げ方については、ほとんどの場合、自然と肘は外旋するため、指導の中で過剰に意識させてしまうと逆効果となることがあります。
過剰な指導にならないように注意しましょう。
球数を制限する
野球肘の症状にも個人差があります。
例えば、投球動作の中で、肘の痛みを感じることもあれば、人によってはあまり痛みを感じない人もいます。
すぐに痛みが出るのは悩ましいことですが、痛みを感じないまま投げ続け、気づいた時には治療に長い期間を要してしまうこともあります。
そのため、球数を制限することも、野球肘を防ぐための具体的な対策と言えます。
年齢や体の成長に合わせて、1日の球数を決めたり、休養日を入れるようにしましょう。
下記の表は、アメリカのMLBで定められいる年齢別に見た投球数のガイドラインです。
年齢 | 投球数の上限 | 休養日 | |||||
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
7-8 | 50 | 1-20 | 21-35 | 36-50 | N/A | N/A | N/A |
9-10 | 75 | 1-20 | 21-35 | 36-50 | 51-65 | N/A | N/A |
11-12 | 85 | 1-20 | 21-35 | 36-50 | 51-65 | 66+ | N/A |
13-14 | 95 | 1-20 | 21-35 | 36-50 | 51-65 | 66+ | N/A |
15-16 | 95 | 1-30 | 31-45 | 46-60 | 61-75 | 76+ | N/A |
17-18 | 105 | 1-30 | 31-45 | 46-60 | 61-80 | 81+ | N/A |
19-22 | 120 | 1-30 | 31-45 | 46-60 | 61-80 | 81-105 | 106+ |
引用:http://m.mlb.com/pitchsmart/pitching-guidelines
このように、メジャーリーグでは、少年野球のうちから発育の状況に応じて、肩や肘をケガ、故障から守るために投球数の基準を設けています。
ぜひ、球数制限の具体的な数を知りたい方は、こちらを参考にしてみてください。
肘、肩のアフターケアをする
投げた後は、肘や肩のアフターケアを忘れないようにしましょう。
最も取り入れられている具体的な方法としては、クールダウンとアイシングが挙げられます。
高校野球の甲子園でも、試合後にベンチ前で軽くキャッチボールをしている様子が見られます。
この軽いキャッチボールは、クールダウンとして、疲労回復のためにも効果的だと言われています。
また、アイシングも効果的だと言われており、多くの選手が取り入れている方法です。
野球肘に限らず、長く野球を続けるためにも、ケガはできる限り防止しましょう。
肩肘の故障を防止しよう
野球で肩や肘の故障を防ぐためには、体の成長に合わせて投球数を検討するなど、正しい知識と十分なケアが必要です。
野球肘についての、解説は下記の動画をご覧ください。
引用:https://www.youtube.com/watch?v=HQVYKgey-XA