ピッチャーが、ストレートのボール回転数(スピン)と球速をアップさせるためには、下半身の使い方から腕の振り方、そしてリリースなど必要なポイントがたくさんあります。
その中でも、投球動作から最後のリリースの瞬間まで、ボールと接しているのが「指先」です。
いくら体重移動が上手くできても、また腕の振りを早くすることができても、リリースの瞬間にボールに力を十分に伝えることができなければ、スピンのかかった速いストレートを投げることはできません。
つまり、ストレートのボール回転数と球速をアップさせるためには、指先の使い方がとても重要なポイントになります。
この記事では、ピッチャーがスピンのかかった速いストレートを投げるための方法とトレーニング、そして最後に役立つ練習道具について解説、紹介します。
記事のもくじ
ストレートの回転数(スピン)は多い方が良いのか?
本題の前にストレートのボール回転数は本当に多い方が良いのでしょうか?
まずは、ボールの回転数が与える影響について知っておきましょう。
ボールの回転数が多いと、主に下記のようなメリットがあります。
- バッターが振り遅れる
- 空振りをとれる
- フライアウトをとれる
つまり、バッターにとっては捕らえにくいボールになります。
その理由は、ストレートの回転数が多いと、空気抵抗はボールの下に流れるため、バッターにはホップしたような軌道に見えるからです。
また、初速と終速の差が少なくなるため、球速以上に速く感じるキレのあるストレートになります。
プロ野球界でも、藤川球児投手のストレートは、「火の玉ストレート」と呼ばれ、浮き上がるように見えるため、プロ野球選手であっても高めのボール球に手を出してしまうほどです。
また、金足農業時代の吉田輝星投手のストレートも回転数が多く、スイングの上を通過するストレートで多くの空振りをとりました。
このように、ボール回転数が多いストレートは、バッターにとっては、他の投手のストレートとは違った軌道になるため、打ち返すのが難しくなるのです。
逆に、平均的なストレートのボール回転数では、バッターにとって打ちやすいボールになってしまいます。
プロ野球や高校野球の甲子園では、スピードガンによって球速表示がされていますが、同じ球速のストレートであっても、回転数の違いによって、バッターから見ると全く違うストレートに見えるのです。
藤川投手や吉田投手のようなストレートを投げるためには、回転数だけではなく、ボールの回転方向も重要になりますが、ボールの回転数が多い方がメリットが大きいのがわかるかと思います。
スピンの効いたストレートを投げるボールの握り方
スピンの効いたボールを投げるためには、指先からボールの進行方向に対して、まっすぐ回転する力が伝わらなければいけません。
そこで、ボールの握り方を工夫することでスピンの効いたストレートを投げることができます。
通常、一般的なストレートの握りは、人差し指と中指の間に指一本くらいの隙間を開けます。
この2本の指の間隔を広げると、ボールの回転数が減るため、スプリット(SFF)やフォークボールのように落ちる変化球を投げることができます。
ボールの回転数が減ることによって、重力と上からの空気抵抗を受けるからです。。
しかし、逆に人差し指と中指の間隔をなくして握ることで、ボールの回転数を増やし、スピンのかかったストレートを投げることができます。
指をそろえるとスピンがかかる理由は、ボールに対して一点に力が伝わるからです。
ちなみに藤川球児投手は、この指をそろえた握り方で浮き上がるようなストレートを投げています。
指をそろえて握るストレートのデメリット
指をそろえて投げるだけで、ボールの一点に力が集中するため、スピンのかかったストレートを投げることができます。
しかし、多くのピッチャーは人差し指と中指に少し間隔を開けて握っていますが、それはなぜでしょうか?
その理由は、デメリットもあるからです。
指をそろえて握るストレートは、スピンがかかるメリットがありますが、ボールへの力が一点に集中するため、リリースのタイミングや指のかかり方が、少しずれるだけでコントロールが大きく狂います。
通常の指に間隔を開けたストレートの握り方の場合、ボールとの接地面が人差し指と中指の二点で支えることができるため、コントロールが安定しやすくなります。
指をそろえてスピンのかかったストレートを投げるためには、普段から繰り返し練習し、リリースの感覚を覚えましょう。
簡単にできる練習方法としては、人差し指と中指を輪ゴムで止めて投げる練習方法があります。
また、練習道具として、スピンチェッカーなども販売されています。
良い投手の条件としては、ボールの回転数やスピードだけでなく、コントロールも必要とされるため、自分に合った握り方を使い分けられるようにしましょう。
ピッチャーの指先トレーニング
回転数が多く、スピードのあるストレートを投げるためには、指先からボールにしっかりと力を伝えなければいけません。
そこで、読売ジャイアンツの菅野投手やヤクルトスワローズの寺島投手なども取り入れている、指先強化のトレーニングがあります。
ピッチャーが球速をアップするための練習メニューとしては、走り込みやウエイトトレーニングなどがありますが、指先のトレーニングは雨天時や冬のオフシーズンなどでも室内で簡単にできるため、オススメのトレーニングです。
指先を鍛える練習方法については、トクサンTVでわかりやすく解説していますので動画をご覧ください。
ボール回転数・球速アップのためのトレーニングギア
最後に、ピッチャーのための、指先のトレーニングにおすすめのギアを紹介します。
ちなみにメジャーリーグでは、トラックマンと言われる高精度な測定機器を使って、あらゆる投手の球速や回転数、回転角度、変化量の他、打者の打球についてもデータを収集し、分析しています。
近年は、日本でも導入が進んでいますが、ぜひ、ストレートのボール回転数と球速をアップさせて、他の投手との差をつけましょう。