野球の攻撃における「バント」は、時に大きく試合の流れを変えることがあります。
ランナーを得点圏に送るための送りバントの他、得点を狙ったスクイズ、出塁するために相手の隙をつくセーフティバントなど、バントにも色々なバントがあります。
そして、それぞれのケースに応じたバントを成功させることができれば、チームの勝利に近くことができます。
今回は、ここぞという時にバントを成功させるための基本ポイントと練習方法を解説します。
バントの3つのスタンスとメリット・デメリット
バントのスタンスは、足の置く位置で大きく3つのタイプがあります。
それぞれのメリットとデメリットを知り、自分にやりやすいスタンスと場面に応じたバントの方法を選びましょう。
オープンスタンス
1つめが、前の足を開き、ピッチャーに対して正対した形のオープンスタンスの構え方です。
オープンスタンスの構え方のメリットは、ピッチャーに対して正面を向くため、ボールが見やすくなることです。
ボールが見やすい姿勢で構えることで、ボールに当てやすいというメリットがあります。
また、後ろ足に体重を乗せて構えるため、前の足を少し足を閉じることで、バントからヒッティングに切り替えることも可能です。
一方で、デメリットは、デッドボールの球を避けづらいという点と、特にアウトコースのボールに対して、上体や手だけでバントしやすくなるという点があります。
上体や手だけでバントをすると、目とバットの距離が変わるため、バントを失敗したり、バットのヘッドが下がることでファールやフライになりやすいといったデメリットがあります。
クローズドスタンス
2つめは、前の足を閉じて、後ろ足を引き、ピッチャーに対して肩越しに見るクローズドスタンスの構え方です。
クローズドスタンスの構え方のメリットは、目とバットの距離を維持しやすく、アウトコースのボールでも対応しやすいというメリットがあります。
また、右バッターの場合は、バントした状態からすぐに走れるため、セーフティバントの成功率を高めることができます。
一方で、デメリットは、左バッターの場合は、バント後のスタートが遅れるという点と、前の足に体重が乗るため、バントからヒッティングに切り替えづらいと言ったデメリットがあります。
そのため、早いタイミングで構えてしまうと、バントシフトを敷かれて送りたい走者をアウトにとられてしまう可能性があります。
スクエアスタンス
3つめは、両足を平行に近い形で構えるスクエアスタンスの構え方です。
スクエアスタンスの構え方のメリットは、バントした後、すぐに走れるといったメリットがあります。
また、セーフティバントやスクイズなどの時に、スムーズにバントの構えができるため、ピッチャーが投げる直前まで無駄な動作がなく、セーフティバントやスクイズを成功させる可能性を高めることができます。
そして、バスターなど、最もヒッティングに切り替えやすい構え方です。
デメリットとしては、バントの時に前に重心移動をしてしまうと、当てに行くバントになり、空振りやフライになる可能性があるといったデメリットがあります。
バントを成功させる基本ポイント
バントのスタンスは、ケース毎に使えるのがもっとも理想ですが、次にスタンス以外のバントのポイントをお伝えします。
バントの高さへの対応
バントでは、ボールの高さによってバットの高さを調整しますが、手だけで調整しようとすると失敗の原因になります。
バントを成功させるためには、まず、バットを構える高さは、ストライクゾーンの一番高めに構えましょう。
そして、構えた高さより、上のボールゾーンはバットを引いて見逃すようにします。
低めのストライクについては、股関節や膝を曲げて、下半身で高さを調整しましょう。
そうすることで、自分からボールに当てに行ったり、バットのヘッドが下がるのを防ぐことができます。
バントのコースへの対応
ボールがコースに来た時の対応も、高さと同様で下半身と連動して行います。
手や上体だけでバントをしてしまうと、目とバットの距離が変わるため、失敗につながりやすくなります。
ポイントは、目とバットの距離を極力変えずに、バントすることです。
アウトコースのボールに対しては、股関節の曲げる角度を捕手側に戻し、下半身を使って対応しましょう。
バットの握り方
バットの握り方も重要なポイントです。
バントと時のバットは、バットの心とグリップの中間あたりを、しっかりと手のひら全体で握ります。
注意するべきポイントとして、あまり芯に近すぎる部分を握らないようにしましょう。
あまり芯に近い部分を握ってしまうと、指をケガする恐れがあります。
指を挟まないように、親指と人差し指、中指の3本でバットを持つ構え方もありますが、ボールの勢いに負けてしまうため、技術や体力に応じて選択するようにしてください。
バットにボールを当てる位置
バントをする時は、芯より少し先の部分にボールを当てるようにします。
理由は、芯に当ててしまうと、強い打球が転がるため、走者がアウトになる確率が上がるからです。
バットの先の部分で転がすことで、打球の勢いを弱めることができます。
バットの先に当てるのが難しい場合は、下半身でボールの勢いを吸収する方法もあります。
その場合は、ボールのラインに沿って、下半身を使ってボールの勢いを吸収してください。
ただし、いずれの場合も、打球の勢いが弱すぎると、キャッチャーからの送球でアウトになる可能性がありますので注意しましょう。
バントの3ステップ練習方法
バントを成功させるための練習方法を3つご紹介します。
小学生などでも、比較的簡単にできる練習ですので、ポイントに注意しながら、ぜひ取り入れてみてください。
片手キャッチ
1つめが片手でボールをキャッチする「片手キャッチ」です。
片手キャッチでは、バットを使わず、5mほどの距離からボールを投げてもらい、芯側の手(右バッターは右手)でボールをキャッチします。
キャッチする時は、手だけを動かしてキャッチするのではなく、下半身を使ってボールの高さに目を合わせ、ボールの勢いを吸収しながらキャッチするようにしましょう。
小学生の低学年など、硬いボールが怖い場合などは、慣れるまで柔らかいボールを使って練習しましょう。
片手キャッチができたら、次のメニューを実践してみてください。
片手バント
2つめは片手でバントする「片手バント」です。
芯に近い方の手で、バットを持ち、先ほどと同じ5mほどの距離から投げてもらったボールを片手のままバントします。
この時も、バットと目の距離をキープしながら、下半身を使ってボールを吸収するようにしてバントします。
あまり速いボールを投げるとケガをする恐れがあるので、投げるボールのスピードには注意してください。
また、小学生で不安がある場合は、柔らかいボールを使用しましょう。
バント練習
最後は、通常のバントと同じようにバントの構えをして、ボールを投げてもらいます。
上の2つのステップで意識したポイントを忘れないよう、下半身を使ってボールに目線を合わせながらバントします。
投げてもらう距離は5mほどからスタートし、徐々に距離を取りながら、慣れてきたら速いボールをバントできるようにしましょう。
速いボールをバントする際は、ケガをしないように必ずヘルメットを着用しましょう。
バントの知識とルール
バントをする際に、もう1つ注意したいのが、足がバッターボックスから出ないようにすることです。
特にアウトコースのボールをバントする時に、足が出てしまうことがよくあります。
せっかくフェアゾーンにうまく転がすことができても、足がバッターボックスから出てしまうと、反則打球となるため、バッターはアウト、走者は元の塁に戻されてしまいます。
ルール上は、足がラインに少しでもかかっていれば、反則打球にはなりませんが、できれば余裕を持ってバントできるようにしましょう。
飛びついてバントして足が出た場合はアウト?
スクイズのウエストなどで、飛びついてバントした結果、空中でバントするケースがあります。
そのようなケースでは、ボールとバットが当たる前に、足が地面に着地しているか、着地していないかで判定は変わります。
もちろん、バットとボールが当たる前に、足が完全に出てしまっている場合は「アウト」となります。
しかし、ボールとバットが当たってから足が完全に出た場合は、アウトにならずプレーはそのまま継続します。
このように、ケースによって違いがあることも知っておきましょう。
以上、今回はバントを成功させるための基本ポイントと練習方法をご紹介しました。
詳しくは、動画でご覧ください。
引用:https://www.youtube.com/watch?v=1szSHvGQjNg