野球をやっていると、投球や送球の時にイップスと呼ばれる症状に陥ることがあります。
イップスとは、主にボールを投げる際の送球難のことで、ある程度遠い距離では、良いボールが投げられるのに、簡単に投げることができるはずの近くの距離で、ワンバウンドや大きく逸れたボールを投げてしまうことです。
このように、イップスに陥るのは、単に技術が未熟だからという原因ではなく、プロ野球選手も決して例外ではないのです。
なんといっても、メジャーリーグでも大活躍したあのイチロー選手ですら、イップスを経験したことがあると過去にコメントしています。
このようにメジャーやプロで活躍する選手であっても、イップスになる選手は少なくないため、例え自分にイップスの兆候があっても、決して卑屈になることはありません。
今回は、実際にイップスを経験したプロ野球選手でもある、元読売ジャイアンツの柴田章吾さんがイップスを克服するために取り入れている練習方法を紹介します。
イップスの主な症状
イップスになってしまうと、今まで普通に投げることができていたにも関わらず、ボールのコントロールすることが難しくなってしまいます。
イップスが疑われる場合は、下記のような症状が見られます。
- ワンバウンドしたり大きく逸れてしまう
- 指にボールを引っ掛けてしまう
- 指にボールがかからずに抜けてしまう
- スムーズに投げることができない
- 下半身と上半身が連動しない
- 近い距離と遠い距離で同じ投げ方ができない
このような症状がイップスに見られる特徴ですが、程度には個人差があり、練習では問題なくても、試合になると症状が出るといった特定の環境下で起こることもあります。
イップスが発症する原因
イップスが発症する原因としては、何らかの要因でメンタルに問題が生じ、技術的なところに弊害が出てしまうといったことが考えられます。
例えば、先輩とのキャッチボールで絶対に暴投を投げてはいけないと気を使ってしまったり、バッティングピッチャーで絶対にストライクを投げないといけないといった、過度なプレッシャーを背負ってしまうような場合です。
過度なプレッシャーがかかってしまうと、リリースの瞬間に筋肉の緊張が起こり、スムーズな動作ができなくなってしまうことでイップスを発症してしまいます。
また、技術的な要因からイップスになる場合もあります。
技術的な要因で起こりうるのは、指導によって部分的なところばかりに意識が向き、他の動作との連動がうまくいかなくなってしまうケースがあります。
例えば、肘やリリースの位置の指導を受けた時に、肘やリリースの位置ばかりに意識が向いてしまうと、下半身から上半身の連動など、他の動作との連動が取れず、投げる時のバランスやタイミングを失ってしまいます。
そうなってしまうと、イップスに陥ってしまう原因となるため、技術指導の際にも十分に注意が必要です。
その他、ケガや故障によって、投げることが怖くなってしまう場合もイップスの原因となる可能性があり、イップスはメンタルが問題だと考えられがちですが、決して精神面だけが原因ではないことを知っておきましょう。
イップスを改善するためのトレーニング
イップスの兆候がある人は、腕や手だけで投げてしまう人が多く、体全体を使った投げ方ができていない場合が多くあります。
ここからは、実際にイップスを改善、克服するために、元読売ジャイアンツの柴田章吾さんが取り組んでいた練習方法を紹介します。
まずは、短い距離でネットに向かって投げてみましょう。
リリースポイントを覚える練習方法
1つめは、リリースポイントを覚える練習方法です。
5m程度の距離にあるネットに向かってボールを投げます。
- ネットに向かって正対する
- グラブを投げたい方向に出す
- リリースポイントをグラブの辺りにイメージして投げる
投げる時にグラブは後ろに引かず、投げたい方向にグラブを出したまま投げることでリリースポイントを覚えましょう。
体を開かずに投げる練習方法
2つめは、横向きからリリースポイントを覚える練習方法です。
先ほどの練習より実戦に近い形になります。
- グラブ側を前にして真横の姿勢で立つ
- グローブを投げたい方向に出す
- リリースポイントをグラブの辺りにイメージして投げる
体重移動を取り入れた練習方法
3つめは、横向きになった上、体重移動をして投げる練習方法です。
さらに実戦に近い練習方法になります。
- グラブ側を前にして真横の姿勢で、足を開き重心を低くする
- 前足→軸足→前足に体重移動しながら投げる
- グローブは投げたい方向に出す
- 腰は90度程度に回す
自分が細い廊下で投げている感覚をイメージすることで、腕が自分の近くを通って、リリースするポイントを覚えましょう。
助走をつけて投げる練習方法
4つ目は、3つめの練習に助走を加えて投げる練習方法です。
この練習では、小さなネットではなく、できれば大きなネットを使い目標を大きくすることをオススメします。
あまり目標を小さくしてしまうと、そこに投げなければいけないというプレッシャーがかかってしまうので、注意が必要です。
セットポジションでの練習方法
5つめは、セットポジションで投げる練習方法です。
ワインドアップをすると体が捻られてしまい、体の軸がブレるため、セットポジションで投げる方がオススメです。
これまでのポイントを意識しながら練習しましょう。
- グローブを投げたい方向に向ける
- リリースポイントを決める
- 体のラインの中で投げる
- 腰を回す
イップスを防ぐポイント
イップスは、誰でも陥る可能性があります。
イップスを防ぐためには、コントロールに対して過剰に繊細にならないように気をつけることが必要です。
そのためには、チームメイトなど先輩、後輩、指導者を問わず周りの気遣いも必要です。
キャッチボールやバッティング練習などで、相手になるべくプレッシャーにならないようにお互いに思いやりを持って練習、試合に臨みましょう。
また、万が一、イップスになってしまった場合、後ろにネットがあるなど、暴投しても大丈夫な場所で練習することから始めるようにしましょう。
くじけずに繰り返し練習することで、是非ともイップスを克服してください。
詳しい解説や練習方法は、動画をご覧ください。
引用:https://www.youtube.com/watch?v=_PVTQaGn0PG0